“日本の職人を応援する”サイト「KAWANOWA」のアトリエ探訪記 Part6 「ラモーダヨシダ」

By on 2017年9月18日

こんにちは。編集長の川崎です。

1周年を迎える“日本の職人を応援する”サイト「KAWANOWA」。アトリエ探訪 その6です。

さて6社目は、お財布を作り続けている老舗企業の「ラモーダヨシダ」さん。そのバリエーションは多岐にわたり、定番である「ラウンド型」を生み出したのもこちらの会社だとか。

「株式会社ラモーダヨシダ」は、昭和36年に「吉田製作所」として創業し、今年で56年目という老舗企業です。二代目である、代表取締役の吉田昌充社長にお話を伺いました。

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◆「バッグ」と「かばん」と「革小物」の関係

バッグに比べると、財布や革小物のものづくりというものは、世間にもあまり知られていないのではないでしょうか。

歴史を紐解くと、「バッグ(袋もの)」「かばん(紳士もの)」「財布・革小物」とは、実はスタート地点が全く違うと言われています。

「袋もの」は基本的に“裏から縫って、ひっくり返して表にする”という手法を取っています。なので、素材は柔らかい布や薄手の革を主に使用します。

「かばん」は着物を収納していた“柳ごうり”づくりから発展し、固くてしっかりした男性向けかばんのものづくりが基礎になっています。主に兵庫県の「豊岡市」が産地。

「革小物」は小さな“工芸品”の世界で、昔は喫煙具から発祥したメーカーも多く、繊細な技術を必要とするものづくりです。

なので財布の本業メーカーが作るものは、歴史的にもしっかりした技術に裏打ちされ、見えない細かなパーツにも気を使っているので、使い続けることで真価がわかる品であると言えます。

バッグメーカーが財布を作る、またはかばんメーカーが財布を作る、というのは、本来であれば“手掛ける職人さんが違う”ということになります。

さすがに今ではそんな厳密な線引きはありませんが、財布の本業メーカーが作るものは、様々な試行錯誤を重ねた末に編み出されているという背景があるのです。

◆厳しい“検品”に対する目

(株)ラモーダヨシダでは、職人を国内外で50人ほど抱えており、常に新しい企画を立ち上げている財布メーカーです。

まず社内にお邪魔してびっくりすることが、広々した「検品室」があること。本社に集まってきた商品は、必ずこの検品室を通り、ひとつづつ開封されて社員総出で検品を行っています。

また商品を大きなX線の機械にかけて、ホチキスの針や余計な金具等が入っていないかをチェックします。そこまでなぜ厳しいチェックを行うのか、吉田社長にお話を伺いました。

「例えば、この1枚の革が“バッグ”になる場合と、“財布”になる場合を考えてみて下さい。革の上にごく小さなシミやキズがあっても、大ぶりのバッグではそれほど気にならないでしょう。けれど財布は、アイテム自体が小さいので、とても目立ってしまいます

本当は、縮尺の違いによる目の錯覚なのですが、やはり財布はしっかり検品を行わないと後で返品対象にもなってしまうので、あえてこのゾーンには力を入れているのです。」

◆ラウンドファスナーの財布を生み出した

バッグやかばんに比べて、財布というアイテムはトレンドが急に変化することがないため、一つの型を長くじっくりと取り組むことができます。しかしラモーダヨシダではそこに甘んじることなく、「企画部」という部署を財布業界で初めて取り入れました。

なんと、今主流になっている「ラウンドファスナー型」の財布は、こちらで生み出されたデザインだそうです。

それまで財布の「企画」というのは、バッグや服のデザイナーが片手間に行っていたことでしたが、専業として本格的に“財布のデザイン”を行うメンバーを社内で育成し始めます。業界でも先進的なことでした。

1970年代頃からビジネスモデルとして広がった“ライセンス生産”により、財布のマーケットも一気に拡大しましたが、国内生産では職人の数が追い付かなくなります。

そこで当時まだ珍しかった、中国へと生産拠点を増やすことを吉田社長が決意されたそうです。

「様々な検討を重ねた結果、90年代に中国に渡ることを決めました。とはいえ5年くらいかけないと職人の技術力は向上しないので、そう簡単には行かない。特に財布は部品点数が多く手間がかかるので、現地の職人を教育することには時間をかけました。」

財布づくりには想像以上の苦労と、新しいものを生み出すための“イノベーション”が詰まっていることを実感させていただきました。

◆直営ショップには「見て触れるゾーン」も

5年前にオープンした東上野本社の地下フロアには、ラモーダヨシダの財布のラインナップが一同に見られる直営ショップがあります。

ヌメ革の手触りが人気の「mic(ミック)」や、直営ショップ限定品でもあるレディスの「micsco(ミクスコ)」など。

ガラス越しには、財布職人さんたちが実際に働く姿を拝見できるのも、ここの魅力のひとつ。

そして注目は、職人の手仕事や革の魅力に触れられる、“大人の社会科見学”ゾーン。実際に使われる財布の「型紙」、革の「漉き(すき)」、革の縁に線を入れる「ネン引き」といった様々な技術を、実際の革に触れながら体験することができます。

一般のユーザーだけでなく、若手職人や販売に携わるスタッフなどにも大変参考になると好評です。昔ながらの貴重な資料なども揃っているので、財布好き、革好きの人にとっては見ているだけでワクワクする空間と言えるでしょう。

◆財布は“ミクロコスモス”

ラモーダヨシダの企画である根本さんに、このショップに関するお話を伺いました。

「財布の作りのイロハを、一から十まで学べるコーナーは他にはないと思います。小さなパーツを重ねたり、見えない部分の革の処理など、財布は“ミクロコスモス”と言われるほど、細かな技術が結集した世界と言えます。

ただ単に、“お札とコインとカードが入ればいい”ということではなく、折れ曲がる時の屈曲度や、カード段の取り出しやすさなど、0.1ミリ狂ったらもうダメという厳しい世界なんです。

なのでこの仕事は、コツコツタイプの方が向いていると思います。業界には意外と、女性の職人さんが多いんですよ。」と根本さん。

直営ショップは、他にも吉祥寺や自由が丘など、計5店舗。特に秋葉原と御徒町間の高架下にオープンした「2k540(ニケーゴーヨンマル)」という商業施設内では、メンズ、レディス財布ともにラインナップされ、大変人気のあるショップです。

“財布作りとは当たり前のことの積み重ね”という言葉を何度も使われる吉田社長。凡人は見過ごしてしまうような些末な作業もないがしろにせず、当たり前を繰り返す重要性を説いておられました。

男性女性関わらず、新しいことにチャレンジをしていこうとする人に対しては、常にチャンスを与えるのがここの社風とのこと。

最近では新卒社員も定期採用するようになり、若い人たちが社内に増えたことで新しい流れも生まれているとのこと。

これからもさらに、“財布への新しい風”を吹かせてほしいです。

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◆株式会社ラモーダヨシダ

東京都台東区東上野1-3-3 03-5816-1811

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About 川崎智枝

靴・バッグ業界の経営コンサルティング会社にて、23年間MDアドバイスや店舗の活性化、店長・スタッフセミナー等を実施。2014年4月よりフリーとして活動。 コンサルタントとしてメーカーや小売店に対し、「何を売るか」「どう売るか」までを幅広く指導。また研修コーチ、ファシリテーターとして人材育成ワークショップなどを開催。 日本皮革産業連合会主催の皮革研修では、三越伊勢丹、大丸松坂屋などの百貨店を中心にファシリテーターとして研修を実施。 生涯学習開発財団 認定コーチ、日本ファシリテーション協会会員。 業界誌「フットウエア・ プレス」、「インテリア・ビジネスニュース」にライターとして執筆中。 著書「靴・バッグ 知識と売り場作り」(繊研新聞社)など。Bag Number編集長。

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