【編集長レポート】イーストトーキョーで“建築の記憶を受け継ぐ”リノベ企業「YUKUIDO(ゆくい堂)」を訪ねて (3)

By on 2017年8月9日

こんにちは。編集長の川崎です。

さて「ゆくい堂さんて何?」という方も、そろそろどんな会社なのかわかっていただけたかと思います。→前回はこちら

丸野社長率いる「ゆくい堂」メンバーが「つくる人」と「むすぶ人」となり、家のもつ“記憶”や“質感”を生かしたリノベーションを行っています。

ここ「ROUTE COMMON」にも「都会でこんな奇跡の場所が!」という噂が口コミで広がり、毎日カフェやアトリエがにぎわっています。雑多な上野とは思えない“南国空間”は、一度足を運ぶ価値ありです。

*

そのナチュラルで無骨な空間作りが口コミで広がり、今ではゆくい堂が“自分たちが住みたい家”というコンセプトでリノベーションを手掛けた「オリジナル物件」を販売しています。

一般の物件より少々価格が高くなっても、ゆくい堂らしいリノベーションと“暮らしの質感”に価値を感じる、こだわりの客層を中心に好評を博しているとのことです。(↓ ゆくい堂HPよりお借りしました)

 

室内に張り出したむき出しのコンクリートの質感や、キッチン周りには無骨な古材を使ったりと、「大手ディベロッパーではぜったいにやらない(丸野さん談)」手法だからこそ、ワン&オンリーな味わいが楽しめる空間に仕上がっています。

■「産地直送」という考え方

ゆくい堂がディベロッパーとの取引をやめ、顧客とダイレクトにやりとりしながら仕事を進める中で、“産地直送”という概念が生まれてきました。

一般的には「産直やさい」などの生鮮品につける言葉のようですが、丸野さんはこんな想いで“家の記憶”を継いでいます。HPにはこんな一文が。

「産地直送 不動産」

いままで暮らしてきた、愛着のある家。

それぞれ訳あって手放すとき。

ただ、ただ、形式的に手放すのではなく。

また‘ここ’に愛着をもってくれる方に、

暮らしてほしい。

そんな「くらす人」のもとへ。

あらたな息吹を吹き込んで、

「つくる人」と「むすぶ人」が届けます。

産地直送、

手から手へ。

*

訳あって実際に手放してしまった家があるひとには、思わずこみ上げるものがあることばです。

つくり手の想いをダイレクトにユーザーへ届けるには、間にいろいろと挟まっていては薄まってしまうことを実感されているのではないでしょうか。

「産地直送」のうねりは、いまのものづくり業界にも浸透しつつあり、手作り市などのイベントから職人マッチングサイトまでと大きく拡大してきました。ある意味で、今後マーケットを読み解く上でも重要なキーワードに浮上しています。

そして、ブックカフェ「ROUTE BOOKS」では、暮らしを楽しむための本や植物、廃材をリメイクした家具や雑貨なども販売しており、“産地直送野菜”のように自分たちの手で直接顧客に届けることを重視しています。

セレクトされた書籍も、いわゆる“取次”を通さない自主出版のものや地方の出版社発信のものも多数揃えています。

廃材や古材から作った家具もあり、“もったいない”という想いを受け継いで、新しいものに生まれ変わらせようとしているのも斬新な試み。こちら↓ の本棚は、実は机の引き出しです。

↓ 家具職人さん(左)と話しながら、桐ダンスをリメイクしている丸野社長。

丸野さん曰く、これらの仕事は「面倒なので他があまりやらないことだから」と笑います。が、その姿勢は「好きだから」を超えた、何か大きなミッションに突き動かされているエネルギーを感じました。

そしていま、古い建物を次々と取り壊してしまう「スクラップ&ビルド」に疑問を呈した若い世代が、ゆくい堂が生み出す“心をつなぐ丁寧な仕事”に惹かれているのではないかと思います。

そして、これからの時代は、さまざまなことが「産地直送」発想になっていくことを実感します。

*

「ゆくい」とは丸野さんの故郷でもある奄美地方の言葉で「休息・休憩」という意味。

まさに植物や本、アートに囲まれて、都会の中の“ゆくい”が体験できる空間になっています。ぜひこの夏、一度足を運んでみては。

◆ゆくい堂株式会社

台東区東上野4-13-9 ROUTE89ビル 1F

*

インテリアビジネスニュース2017.07.25号を大幅加筆しました

About 川崎智枝

靴・バッグ業界の経営コンサルティング会社にて、23年間MDアドバイスや店舗の活性化、店長・スタッフセミナー等を実施。2014年4月よりフリーとして活動。 コンサルタントとしてメーカーや小売店に対し、「何を売るか」「どう売るか」までを幅広く指導。また研修コーチ、ファシリテーターとして人材育成ワークショップなどを開催。 日本皮革産業連合会主催の皮革研修では、三越伊勢丹、大丸松坂屋などの百貨店を中心にファシリテーターとして研修を実施。 生涯学習開発財団 認定コーチ、日本ファシリテーション協会会員。 業界誌「フットウエア・ プレス」、「インテリア・ビジネスニュース」にライターとして執筆中。 著書「靴・バッグ 知識と売り場作り」(繊研新聞社)など。Bag Number編集長。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)