【編集長コラム】 2018年 “川崎的”お気に入り「ベスト3ブックス」 / 年末のご挨拶

By on 2018年12月28日

こんにちは。編集長の川崎です。

あと3日で大みそか。本日で「B.A.G. Number」も仕事納めとさせていただきます。

今年は、人生で本当にやりたかったことがやれる土壌ができてきた、という実感を抱けた1年でした。台湾でセミナーをさせていただいたり、学び合う仲間との強い信頼関係が構築できたり…。

自身を更に“ストレッチ“できたように思います。ともに支えてくださったみなさま、本当にありがとうございました。

さて最終回には、編集長・川崎が今年、手当たり次第に読み漁った本の中で、とくに印象に残った「ベスト3ブックス」をお届けしたいと思います。

仕事柄どうしても、ビジネス書系を選んでしまうきらいがありますが、実はその中の数少ない「無骨な小説」が、今は深く深く心に刻まれていると気づきます。いいですね、物語って。

それではまずこの本からご紹介。

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1.「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか」山口周

特に2017年発刊の書籍ですが、今年ベストセラーになりました。この本は会った人会った人に勧めまくってましたし、セミナーでもよく例に出しました。業界の経営者の方にも差し上げたりして。

「美意識を鍛える」というくだりは、「おお、いまはそんな教養を身につけるんだ」と思ったらとんでもない。そういうことではなく、もっと“エリートらしい”目的で美意識を鍛えていた点に、ちょっとゾクっとします。

この本を業界の方に読んでもらいたいと思うのは、「すべての消費はファッション化する」というキーワードがあったからでした。マズローの欲求五段階の「自己実現」を表現するために、「消費は全世界のユーザーにとっての表現手段になるからだと作者は言います。

私たちも、単に“ファッションビジネス”という概念よりも、この業界では当たり前と思われていた“感性“を再定義したり、“ものを見る時の感度”を磨き、「ユーザーが表現したい欲求を叶える」ことをもっと提案していく必要がありそうです。

副題が「経営における『アート』と『サイエンス』」ですが、「アート」は“直感”や“感覚”みたいなもので、数字的な裏付けが難しいもの。「サイエンス」は数字やエビデンス。これに「クラフト=経験値」が加わって三位一体のような形になります。

いまのファッション業界は、この中の「サイエンス」と「クラフト」に重きが置かれ過ぎ、「アート」の部分がないがしろにされているのではないかと感じています。

昨今、大手企業が次々と違法行為を繰り返すニュースが後を絶ちませんが、それは「エリートたちの美意識の欠如」がもたらしたものだと作者は言います。今まで振りかざしてきた論理的思考をもとに、合理性や効率を求めた結果、システムがめまぐるしく変化していく時代の中では次第に数字を作れなくなる、そして違法行為に手を染めてしまう。。

そうならないために自分の中に確固たる「芯」を持つ、「ぶれない美意識」が不可欠な時代が来るという視点が新鮮でした。なるほど!

そして「パターン認識」の怖さ。人は以前と同じようなものを見ると、詳細をよく確かめずに「これは去年も見た〇〇だろう」と勝手に認識してしまうのだとか。これって私たちのビジネスでもよく聞きます。時代が変化しているにも関わらず、自分の成功体験を今尚ひきずってしまったり。まず、「これでいいんだっけ?」と自己否定から入ることが、“パターン認識”から脱却するコツだと思います。

この業界に多いフリーランスや“ピン“で活動する私たちこそが、自分たちの中に「美意識」という軸をしっかり持ち、活動していきたいものです。そんな“個”同士がつながりあうことで、企業とのコラボレーションや、横のつながりであるチーム活動も、より活性化していくのではないかとこの本を通じて気づかされました。改めてビジネスに、「真・善・美」を認識することの重要性を実感します。

いまでも時折、お守りのように読み返しています。

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2.「経営とデザインの幸せな関係」 中川淳

「中川政七商店」の社長である中川淳氏(現在政七に改名)による、ほぼ彼のコンサルタント仕事の手の内を明かした本。2年前に出た本ですが、知ったのはある経営デザインセミナーでした。「小さな会社がブランディングを考えた時は必読ですよ」と、講演者ご自身の書籍よりも、真っ先にこれをお勧めされていました(笑) 

こんなに書いちゃっていいの?というくらい、企業再生を手掛けた中川氏のリアルな経験がもとになっています。みなさんもよく知る長崎の「HASAMI」なども登場し、なるほどかくもこのようにブランディングは成しえたのか…と、しみじみ納得できました。

コンサルタントとはいえ机上の論理だけではなく、熱い想いをもった経営者とともに、二人三脚で行動することが大切だということを指し示してくれています。やはり一緒にブランディングしていくのは、業界に染まり切っていない二代目三代目の若い経営者たち。彼らの覚悟と夢が、会社と業界をダイナミックに変えていってほしいと願います。

本は半分くらいが「書き込めるワークブック状」になっていて、これはもはや“教科書”のようなもの。私もワークの部分はコピーして、企業にお邪魔させて頂くときの下書きとして活用させて頂いてます。コンサルという立場にとどまらず、外部契約のデザイナーさんや社内のブランドディレクター、ひとりクリエイターなど、色々な立場の方が読んで役立つ本だと思います。

「日本の工芸を元気にする」という中川氏が掲げるミッション。これにより、日本全国の伝統工芸やものづくりの産地が新たな第二・第三創業を迎え、少しづつ息を吹き返しています。彼はすでに会長職に就かれていますが、創業300年企業のトップという立場もさぞ重圧だろうなと想像しつつ、ひらりと軽やかに仕事を楽しんでいる姿も、なんだか勇気をもらえます。

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3.「一九八四年」 ジョージ・オーウェル

いきなり、「ドォーン!(喪黒福造風に)」と暗い本、そして世紀の名著です。なぜかこのタイミングで読むことになりました。

どうしてこれを今になって手に取ったのかというと。。3月にEテレでやっていた、各界著名人がおすすめ書籍を紹介する番組「100分de名著スペシャル」で、高橋源一郎さんがこの本を取り上げていたからでした。

1949年に書かれた「『未来の1984年』を描いたディストピア(反ユートピア)小説」というのは良く語られるコピーですが、そこに高橋源一郎さんの濃密な解説と、冒頭ストーリーのアニメーションまでついて、更に引き込まれました。

感想は、いや、もう、暗かった怖かった、ほんとーーーに怖かった!! 下手なミステリー本なんかよりずっと怖い。

読後はしばらく立ち上がれず、1週間くらい暗澹とした気持ちでした。それでも!今この本を勧めたい。「こ、これって今の時代じゃね?」と心底思えてしまうからです。

1984年の“未来”に生きる主人公は、独裁者「ビッグブラザー」が統治する徹底した管理社会の中に住む、党メンバーの一員。各戸に備えられた、国民を24時間監視するシステム「テレスクリーン」や、「実際は間違っていると知っていることも、正しいと心から信じる」という「二重思考」が人々の間に浸透しています。

また、話されている言語は「ニュースピーク」といって、極端に単語・文法を単純化したもの。これは言葉を減らすことで「考えること」を骨抜きにし、国民の思想を単純化・統制する目的があります。巻末に「ニュースピークの諸原理」まで付いているご丁寧さ。

党のスローガンは「戦争は平和なり、自由は隷従なり、無知は力なり」。思考の上でも従わない人は「思考警察」が徹底的に追い詰める。。なんかどこぞの国のような気がしてなりません。

決してハッピーエンドではないのですが、読み終わってふと、この世界で「私は自由に思考し、自由に行動できる」ことに気づかされ、じんわりと感謝が沸きあがります。作者もこういう極端なディストピアを示すことで「今生きている世界での、ささやかな幸せへの賛歌」を謳っているんだろうなと感じました。この自由を、もう誰かに支配されてはいけない。

高橋源一郎さんのコメントが秀逸でした。「自由とは、やりたいことが出来ることではあるけれど、それを“やらされてやる”のは自由ではありません」。やりたいこととやらされていること。“自分の本心”が取り違えられている人は少なくないです。

そして更に、「憎悪の反対は、ユーモア」「“問い”を投げかけることをし続けるのがメディアの役割」と刺さる言葉が印象的でした。

真剣になっても深刻にはならず、ユーモアを忘れず、そして「問い」を投げかけつづけること。

2019年はそんな編集長・川崎智枝でいたいと思います。

あら、図らずもまとめとなりました。お勧め選書があればぜひお教えくださいませ。

ではみなさま、良いお年をお迎えください。

来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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About 川崎智枝

靴・バッグ業界の経営コンサルティング会社にて、23年間MDアドバイスや店舗の活性化、店長・スタッフセミナー等を実施。2014年4月よりフリーとして活動。 コンサルタントとしてメーカーや小売店に対し、「何を売るか」「どう売るか」までを幅広く指導。また研修コーチ、ファシリテーターとして人材育成ワークショップなどを開催。 日本皮革産業連合会主催の皮革研修では、三越伊勢丹、大丸松坂屋などの百貨店を中心にファシリテーターとして研修を実施。 生涯学習開発財団 認定コーチ、日本ファシリテーション協会会員。 業界誌「フットウエア・ プレス」、「インテリア・ビジネスニュース」にライターとして執筆中。 著書「靴・バッグ 知識と売り場作り」(繊研新聞社)など。Bag Number編集長。

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