アート感覚を付加価値として打ち出す ジャパンレザーの新傾向【まとめ】

By on 2018年5月10日

ディレクター 鈴木です。このところ、アートを意識したものづくりが気になっています。

 

ロングトレンド「ノームコア」と入れ替わり、浮上した「スポンテニアス」。英語で「自発的な」「任意の」といった意味を有するキーワードに呼応し、レザーにも脱シンプルの流れが。一方、景況感がゆるやかに改善し、消費税増税前の駆け込み需要も想定されるいま、長期保有し愛着することができる上質な革製品がじわじわと増加。その差別化として「アート」という切り口が多く見受けられます。

 

ファッショントレンドだけでは購買意欲が刺激されなくなりつつある一部の高感度ユーザーをターゲットに希少性、価格に見合う適正な価値を提示するための欠かせない要素のひとつとしてとらえられているようです。そんな現状を探ってみました。

 

 

「TOKYO LEATHER」最新トレンドは、絵画のような柄、作品性の高い立体感

 

まず、素材の傾向から。「JFW Japan Creation」「東京レザーフェア」で発表された東京都、東京製革業産地振興協議会「TOKYO LEATHER」最新トレンドでは「精緻な加工技術:多彩な風合のバリエーション」、「新しい装飾性:色×プリント×光沢」、「トレンド力:色/光沢/タッチ」といったカテゴリーを提案。

 

 

絵画のような柄、作品性の高い立体感に目を奪われます。トーキョーレザー、ピッグスキンは高い可塑性が特徴。

 

 

 

素材特性もさることながら、地場ファクトリー、熟練職人たちの磨き上げた技術が支えています。人気ブランド<カーマイン>のコレクション(東京のピッグスキンを使用した革製品)がニューヨーク近代美術館<MOMAデザインストア>で取り扱われることでそのクオリティを証明しました。

東京都立皮革技術センター

「東京産の皮革 ピッグスキン」
http://www.hikaku.metro.tokyo.jp/pigskin/index.html

<TIME & EFFORT>

「レザーの社会科見学 エキスパートに聞いてみた 

東京都立皮革技術センター」
http://timeandeffort.jlia.or.jp/interview/03_1.html

東京製革業産地振興協議会 タンナーの特色をコンパクトにまとめたハンドブック「TOKYO LEATHER PIGSKIN 東京産の皮革ピッグスキン」は、弊誌編集部が取材&ライティングを担当いたしました。ブースに設置・配布されていますので、ぜひ、お持ちください。取材内容はアーカイブで閲覧していただけます。

 

 

クリエイターが一枚一枚手描きで仕上げる絵画的なレザー

 

絵画のようなハンドペイントレザーを展開するのは<ショイズクローゼット>。何気ない風景や感情を色で描く、気の赴くままに色で描く、やさしさがあふれる作風が素敵です。

 

アイコン的存在、カワヌリエをはじめ、クリエイターの上川 美希さん自ら一枚一枚ていねいに手描きで仕上げています。

 

ユーザーが体験できる小物づくりワークショップも好評。福祉作業所とのコラボレーションもスタート。ソーシャルな革小物づくりにトライしています。

<ショイズクローゼット> http://www.shoys-closet.com/

世界的に注目される靴アート

靴では、シューズアーティスト・三澤則行さんの活躍により、アートとしての側面に注目が。ウィーン、カンヌ、ニューヨーク、シンガポールと世界各地で発表され、高く評価される三澤さんの靴アート。この春、復刊した靴雑誌「シューフィル」の表紙を飾り、話題となっています。

 

 

この春、東京・浅草で行われた「靴の記念日-メモリアルイベント 2018-」第三弾として「シューズアーティスト・三澤則行の世界」では2017年11月のニューヨーク個展発表作品を中心に紹介し、連日盛況でした。

 

国内最大のレザープロダクトコンペティション「Japan Leather Award 2013」では、シューズではなく、テディベアで部門賞を獲得。その影響からか、シューズクリエイターが革小物を手がけることが多くなっているように感じます。残革の利活用、売り上げの安定化に最適なので、トライしたくなるのは必然ですよね。

 

<noriyuki misawa> http://www.noriyukimisawa.com/

 

 

独自技術でつくられた立体的なレザーバッグが富裕層に人気

 

アート的なバッグといえば、<革*jacobi>の躍進が目をひきます。シグネチャーライン<革切子®>は伝統工芸、切子をイメージ。実用新案登録済の独自技術で立体感あるフォルムをつくり出しています。百貨店でのフェアやイベントのオファーが絶えない人気ブランドへ成長しました。

 

なかでも創業350余年の老舗<京漆器 象彦>とのコラボレーションは、アート的な存在感抜群です。

 

「蒔絵バッグオーダー受注会」は各地で好評。ジェイアール京都伊勢丹、伊勢丹新宿店の呉服フロアで開催したポップアップイベントでは富裕層や海外からの観光客の反応がよかったそう。新規プロジェクトも進行中。そのお披露目が楽しみですね。

<革切子®> https://kawakiriko.jp/

「エミール・ガレ 自然の蒐集」をイメージした革小物

アート展示会とのコラボレーションが話題の<加藤キナ>。上質な革でバッグや小物、コサージュを手がけるご夫婦のユニットです。3月17日からスタートした「エミール・ガレ 自然の蒐集」(神奈川・箱根 ポーラ美術館)に合わせ、財布を発表しました。手染め鹿革を使用し、手仕事で仕上げた鹿角パーツを配した「あかつきの蝶」(写真:<加藤キナ>フェイスブックページより)。あたたかな色合いと精緻な細工との絶妙なバランスが素晴らしい。現在、館内のミュージアムショップで取扱いされています。

 

 

2017年、<Six COUP DE FOUDRE>を中心に開催されたイベント「ジビエ革3人展/森の声をカタチにする」に参加。農林業への被害を防止すべく、45万もの野生動物が有害捕獲される現状に心を痛め、「捨てられるだけの命を有効活用したい」と、鹿、猪などの革を総称して<ジビエ革>とネーミング。今回使用されているのも<ジビエ革>。ものづくりによって社会問題を解決するための一助となっています。

 

 

<ポーラ美術館>が開館以来初となるエミール・ガレの展覧会「エミール・ガレ 自然の蒐集」は19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを魅了した芸術様式、アール・ヌーヴォーにおいてガラス工芸の分野で第一人者として活躍したガレの初期から晩年までの優品を紹介。創造の源泉であった自然を、森と海というふたつのキーワードを通して、ガレによる自然の蒐集行為を検証しています。

 

 

同展では、モデルとしても活躍する人気アーティスト niŭ(にゅう)さんの彫刻作品「しあわせな犬」とのコラボレーションディスプレイも話題です。niŭさんは、企画制作、デザイン、イラストレーションを担当。春の始まりから盛夏まで、美術館を取り囲む「森」を借景に、彫刻が最もよく見えるチケットカウンター横のガラス面を「ガレの森と海」をテーマとしたイラストレーションが彩っています。

 

 

<加藤キナ> https://www.facebook.com/kina.kaban

 

 

大人世代に人気 アート感覚の水玉レザーバッグ

 

アート的なテイストに支持が寄せられ、ロングヒットしている<藤和商会>オリジナルブランド<BONBON(ボンボン)>(リニューアルにより、2018年秋冬よりブランド名変更)の<DOTS(ドット)>は、その名の通り、ドット(水玉)をモチーフに展開。2016年秋冬にスタート(リニューアル前)し、5シーズン目に突入。自身のスタイルを確立した大人の女性に向けて、「自分らしさ」を表現できるバッグを使ってほしいとの願いを込めてつくられています。

 

ドットは、草間彌生さんに代表されるような、アートのモチーフとしてもお馴染み。この春夏シーズンの旬ですが、それまでファッションのトレンドとして消費されていなかったため、アート的なニュアンスを感じやすく、ピンドット以上の大きめの水玉は若い世代のライトユーザーが取り入れにくいようです。

 

 

しかし、DCブランドブームを経験している大人世代にとっては、80年代中盤に大流行(「ふたりのイエスタディ」が大ヒットしたニューウェーブ・ポップ・デュオ、<ストロベリー・スウィッチブレイド>のコスチュームの影響も)した懐かしさがあり、某人気ブランドの定番として認知されているので、洗練されたイメージが根強く残ります。「わかるひとにはわかる」「大人ならではのおしゃれ」として共感を得ているのではないかと推察しています。

 

ファッションでは、トレンドの役割が弱くなっているなか、「ノームコア」の影響が依然残り、パーソナルな個性・着こなしへの不寛容さがあるのも事実。ファッション性よりも、「アート」、「デザイン」的な要素を打ち出すことで、ユーザーが選びやすくなっているのかもしれません。

このほか、<藤和商会>では、海外生産でも特徴的な素材づかいのアフォータブルラグジュアリーライン<am(アム)>を始動。コンセプトワーク、イメージビジュアルにも注力し、業界関係者に好評です。

 

 

「2018年秋冬のテーマは、[引力]です。人を引き寄せ、映えること/人が語らずとも、モノがその人を語り引き寄せる、引力/バッグは持つ人/[私、そのモノ]だから。革の魅力を引き出し、それぞれの魅力際立たせるコンビネーション、DC時代を彷彿させる強烈かつエレガント・・・これからの時代をつくるジェントルウーマンに使ってほしいですね」と同社ディレクター 細江典子さん。

今後は財布や革小物のバリエーションを拡充し、ミュージアムグッズとしての展開も視野に入れているそう。主力製品、レザーメッシュのバッグで知られ、「メッシュの藤和さん」と業界関係者、バイヤーに親しまれている同社は、創業30周年を迎え、ますますパワーアップ。付加価値性が高いものづくりのさらなる進化に期待が寄せられます。

<藤和商会> http://www.towa-bag.com/

ミュージアムショップ、デザイン系セレクトショップ、ギャラリーショップ、ライフスタイル提案ショップ・・・とジャンル・業態の際が曖昧に。ユーザーの選択肢が広がるいま、アートに接近する日本製革製品の可能性、さらなる広がりを感じます。

一般社団法人 日本皮革産業連合会ホームページ公式ブログ「欧米ブランドに負けていないぞ」とのシェアコンテンツ

元記事を読む http://www.jlia.or.jp/enjoy/blog/

About 鈴木 清之

オンラインライター、ブロガー。「装苑ONLINE」、スタイルストア「つくり手ブログ」<徒蔵(カチクラ)ガイドブック>ほか、一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA/皮産連)オフィシャルブログおよび関連事業のSNSアカウント<中の人>業務、コンテンツ運用を担当。 紙媒体ではムック「日本の革」(エイ出版社)の取材・ライティングを担当した。 弊誌では担当分のニュースを「B.A.G.NUMBER LENS」として発信。日本国内のバッグブランドを中心に財布、革小物からライフタイルグッズまで幅広く「レザー」「エシカル」「ナチュラル」「サスティナブル」に関するトピックを紹介している。 東京・北千住で生まれ、リーガルコーポレーション(現在は浦安に移転)や大峡製鞄をはじめとした ものづくりのメーカー、ファクトリーが身近にある環境で育つ。精肉店の三代目として家業を継ぐべく竹岸食肉専門学校を卒業。ファッションへの夢を断ち切れず、文化服装学院に入学、同校ファッション情報科を卒業。

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