【編集長コラム】 2017年 “川崎的”に印象に残った「ヒト」トピックス / 年末のご挨拶

By on 2017年12月31日

こんにちは。編集長の川崎です。

あっという間に大みそか。「B.A.G. Number」も私も、色々なチャレンジをいただいた、ワクワクな一年でございました。

さて最終回には、編集長・川崎が今年印象に残った「ヒト トピックス」をお届けしたいと思います。

バッグまわりだけの取材にとどまらず、「フットウエアプレス」「インテリアビジネスニュース」の取材・執筆もさせていただくなかで、ユニークな方々とたくさん出逢わせていただきました。

特に都心だけではなく地方都市で、コツコツと地道な努力を続けていたり、個性的なショップを開いていたりする方が多かったです。

人生のなかで学びになることが多く、そんな方と出会うと「この仕事してて良かったなー」と思えます。

それではまずこの方からご紹介。

*

1.マドラス(株) 田口芳男さん @ほの国百貨店(豊橋)

愛知県・豊橋駅前にある老舗の百貨店「ほの国百貨店」。シューケア売り場の取材で伺わせていただきました。東海の東三河エリアはかつて「穂の国」と呼ばれていたとか。

田口さんは、現在マドラスの社員として紳士靴を販売されていますが、顧客満足を徹底するためにフルラインナップのシューケア用品からなんと高級ジーンズまでと、一風変わった売り場作りをしている、業界では“超有名人”。

まるで社会科見学?!「コロンブスの歴史」コーナーまで作っているのには思わず笑ってしまいます。

 

お世辞にも客数が多いとは言えない一地方百貨店。にも関わらず、田口さんのところでしか靴を買わないという、遠路はるばるやってくるお客さんは後を絶たず。20代の若い世代も少なくないとか。

軽妙な語り口に気持ちよく乗せられながら、見ただけで合うサイズを出してくれて、靴のフィッティングをし、ケア用品、はてはボトムのジーンズまで買ってしまうという一連の流れるような接客に、ただただ舌を巻きました。当日はなんと地元の県会議員の方までご来店。

決して押し付けがましくなく、靴を大切にするという想いに溢れ、みなさんがファンになるのもうなづけました。

「自分では、いわゆる紳士靴売り場ではなく“靴屋”だと思ってるんですよ(笑)。店頭にこれだけケア用品を積み上げているのも、パッと見た時に『これだけ靴クリームがあるなら、いい靴がある』と思ってもらえるから。特に直しがきく革底やグッドイヤーの靴は、結局は長持ちしてお得でもあるんです。」と田口さん。

平均客単価はなんと36,000円。月ごとにも「靴磨きイベント」から「ジーンズの試着会」まで様々なイベントをメーカーと一緒になって提案する。この売り場めがけてお客さんも足を運びます。

SNSなどは一切触らない田口さんであっても、地方でまだやれる可能性が残っている。たくさんのチャンスと勇気をいただきました。

2.丸野信次郎さん @ゆくい堂(上野)

雑多な下町感が残る上野の一角に、「ゆくい堂」というリノベーション設計施工を行う会社があります。インテリアビジネスニュースの取材でお邪魔しました。

リノベーションを手掛ける企業は増えてきたものの、まだまだ「暮らす」人の視点に立って企画・製作してくれるところは少ないと言えます。

こちらでは現場監督が直接職人とやりとりをし、顧客のイメージを形にする“考えながらつくる職人集団”。事務所は、古いガラス工場をリノベーションした雰囲気ある空間で、向かいには「ROUTE BOOKS」というブックカフェ、ギャラリー、グリーンショップなどが入っています。

ここにお邪魔してすぐに、ある種の“なつかしさ”を感じてしまいました。廃材や古材から作った家具などがあちこちにありますが、かつての代官山「ハリウッド・ランチマーケット」の地下カフェ「ボンベイバザール」によく似ていて。大好きでよく通ったなぁ。

丸野社長は、“産地直送野菜”のように自分たちの手で、物件を直接お客さんにお届けすることにこだわっています。スクラップ&ビルドばかりの建築業界に疑問を呈した若い世代が、ゆくい堂が生み出す仕事に惹かれているのもよく分かります。

丸野社長の厳しいながらも愛ある指導で、若い職人さんたちが何人も育っています。孤高の職人という雰囲気ですが、時折見せる笑顔がチャーミングでした。こういう社長、憧れますね。

3.金田陽司さん @協伸(株) (姫路)

なかなかタンナー(革なめし工場)さんを取材する機会が少ないのですが、なんとか姫路の革メーカーを取材したい!と頼み込んで伺ったのが「協伸株式会社」の金田社長。別の革小物メーカーさんの取材先で、偶然お目にかかりました。

協伸(株)の三代目。ドイツで革の技術を学ばれて、ヨーロッパの皮革業界にも情報通。「テックレザー」という超軽量の革や、植物染料で染める「ボタニカルレザー」、それを応用した「姫路城の桜で染めたレザー」など、びっくりするような新しい素材の開発を進めていました。

ドイツ人の奥様とともに切り盛りされ、工場で跡を継ぐ頼もしい娘さんも。お二人もとても愛らしい! 二人で笑いながら作業する姿に、新世代のタンナーさんの姿を見る思いです。

女性でも扱えるIT化された最新式の機械を取り入れ、革づくりの世界を「職人でないと分からない」から、「誰でも扱えるもの」に変えたいとおっしゃっていました。この世界も高齢化になり、効率を考えないと先はないと考えられています。

六年前には、伝統の姫路の白なめし革をいまに伝えるための「姫路靼(ひめじたん)再現プロジェクト」まで立ち上げられました。市内を流れる市川で、漬け込みや天日干しなど、かつて姫路の職人たちが行ったやり方を辿ってみる、珍しい試みです。詳しくはこちら

素材作りの可能性と真摯に向き合われる姿は、まるで武士道にも通じるほど。実はドイツでは柔道をされていて、その道場で奥様と知り合われたとか。なるほど、そうだったんですね!

タンナーさんの新しい息吹を感じた、充実の取材でした。こちらも元気を頂きます。

*

以上です。まだまだご紹介したいですがこの辺で。

振り返ってみると、やはり「自分の力を信じている」人が好きなんだなぁと思いました。

2018年にはまたどんな方にお目にかかれるのでしょうか! モノやショップだけでなく、その場にいる“ヒト”にもスポットライトを当てていきたいと思っています。

来年も旅する編集長が伺います!どうぞよろしくお願いいたします。

*

さて売り場の方は今日も明日ももちろん営業中。販売スタッフの皆様、あと少し、頑張ってください!

今年も1年、本当にありがとうございました。鈴木ディレクターと共に御礼申し上げます。来年は3日からスタートいたします。

これからも引き続き、「B.A.G. Number」をどうぞよろしくお願い申し上げます。

無病息災を願って。来年も良い年でありますように・・・。

About 川崎智枝

靴・バッグ業界の経営コンサルティング会社にて、23年間MDアドバイスや店舗の活性化、店長・スタッフセミナー等を実施。2014年4月よりフリーとして活動。 コンサルタントとしてメーカーや小売店に対し、「何を売るか」「どう売るか」までを幅広く指導。また研修コーチ、ファシリテーターとして人材育成ワークショップなどを開催。 日本皮革産業連合会主催の皮革研修では、三越伊勢丹、大丸松坂屋などの百貨店を中心にファシリテーターとして研修を実施。 生涯学習開発財団 認定コーチ、日本ファシリテーション協会会員。 業界誌「フットウエア・ プレス」、「インテリア・ビジネスニュース」にライターとして執筆中。 著書「靴・バッグ 知識と売り場作り」(繊研新聞社)など。Bag Number編集長。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)